2.鼻欠地蔵 (はなかけ じぞう) (民話)
 高野辺( たかのべ ) の 仏 性寺 ( ぶっしょうじ ) ( 地蔵尊 )に鼻欠け地蔵 (注2 ) が 安置されており、次のような 民話が伝わっています。

日照 り続きで大変な 水不足の年、お 百姓さん同士で田んぼにかける水のことで 争いがおきていました。あるお百姓さんは、 真っ 暗な 晩によその田んぼに入る水を止めて、こっそり自分の田んぼにだけ水を入るようにしました。

夜が明けると、そのお百姓さんは、水がいっぱいになったかなと田んぼを見に行きました。ところがどうでしょう。よその田んぼにも、同じように水が流れていたのです。 不思議に思ったお百姓さんは、その夜も、自分の田んぼにだけ水が流れるようにして、こっそりと 物影にかくれて 見張 っているこ
  (注2 )
        仏性寺の中に鼻欠け地蔵様が安置されていると言われている。

とにしました。
しばらくすると、どこからともなく一人の子どもがあらわれ、少ない水を、まわりの田んぼにも同じように分けているのです。
「こらっ 」 怒ったお百姓さんは持っていたくわで思いっきり、子どもをなぐりつけました。すると、子どもの 姿はすうっと消えてしま いました。
  つぎの朝、お百姓さんは、村はずれのお地蔵さまを見て、「あっ」と 驚きました。お地蔵さまの 鼻が、 痛々しく 欠けているのです。

 実は、昨日の夜、お百姓さんが田んぼでなぐりつけたのは、お地蔵さまだったのです。

お地蔵さまの教えをさとったお百姓さんは、自分のやったことを 村人にお詫びし、それからというものは、みんなで 仲良 く水を分 け合い、これまで以上にお地蔵さまを大事にするようになりました。

(天童市「ふるさとのむかしばなし第 1 集」より)