改訂版発刊に寄せて 

 地域のことばを取り巻く状況は、常に変化し続けています。特に、共通語の浸透により、若い人の言葉から方言的な特徴が薄くなりました。これと同時に、ことばの暖かさや地域のふれあいも薄れてきたような気がします。

 一方で、一人の人が場所・場合・話す相手によって、方言と共通語を使い分けたり、両者の中間の言葉が使われたり、方言と共通語の共存という状況がうまれています。また、方言はどちらかといえば「悪いことば」「恥ずかしいことば」「無くしたいことば」といった負のイメージで語られることが多かった以前に比べ、友人同士などの私的なコミュニケーションの場を中心に、使用を尊重する雰囲気がうまれています。その背景には、共通語が日常生活のなかで普通に使われることばになったことへの反動として、地域に根ざしたことばである方言に文化的な価値を見出すようになってきたのだと思います。

 このような状況のなか、平成十三年三月に「蔵増のズーズー弁だッス」初版を発行してから5年が経過し、その後に調査した約200の方言を追加するとともに、方言に関する日常会話の用例や蔵増地区に伝わる昔話・伝説を新たに挿入した「蔵増のズーズー弁だッス改訂版」が発行されることは大きな意味を持つものと考えております。

 この本の活用方法としては、一戸に一冊の方言辞典として、また、懐かしさや思い出にかられたとき、蔵増を出た人が地元に帰ってきたとき、仕事でストレスがたまったときなど、ほっとしたいときにこの本を読んで、地域の暖かみに触れていただきたいと思います。

 また、今回の改訂版に挿入した昔話・伝説は、平成十六年六月に蔵増地域づくり委員会が地区の全戸に配布した「いなほ史跡マップ」に、位置図やウォーキングコース、説明文を掲載しておりますので、あわせて効果的に御活用くださるようお願いいたします。

 最後に、地域づくり委員会地域振興部会・文化学習部会及び編集委員の皆様、そしてこの改訂版発行に御尽力いただいた事務局長の齋藤和敏さんに厚くお礼を申し上げます。

  平成十八年三月       蔵増地域づくり委員会 委員長 熊澤 義也